技術に関する新規のアイデア(発明)に対して特許を受けるには、願書に複数種の書類を添付して、特許庁に提出しなければなりません。
この手続は、一般に、特許の申請と呼ばれることが多いのですが、正しくは、特許出願といいます。
提出する必要がある書類は、独占権を得たい技術範囲を記載した書類(特許請求の範囲)、発明を詳細に説明する書類(明細書)、発明を簡単に説明する書類(要約書)で、
さらに、多くの場合、発明の説明に必要な図面が提出されます。
下記に、特許出願に関する諸手続の流れの概略を示すフローチャートを示します。
その下の「補足説明」も合わせてご参照下さい。
特許出願は、出願人が早期の公開を請求しない限り、出願の日から1年6ケ月が経過するまで秘密の状態に置かれます。
1年6ヶ月が経過すると、公開特許公報という刊行物によって出願の際に提出した書類が公開され、さらに、出願後の経過を検索したり、特許庁に書類の閲覧を請求することもできるようになります。
出願公開は、特許出願が取り下げまたは放棄されない限り、特別な手続をしなくとも、時期がくれば必ず行われますが、審査を受けるためには、出願から3年以内に出願審査請求という手続をしなければなりません(出願と同日でもよい。)。出願審査請求の期限について、特許庁から何らかの通知が来ることはなく、出願審査請求が行われることなく特許出願から3年が経過すると、当該特許出願は取り下げられたものとみなされてしまいます。
審査請求手続が行われると、特許出願は審査の順番待ちのリストに加えられ、順番がくると、担当の審査官により審査されます。審査官は、特許出願を審査基準に従って審査し、拒絶の理由が見つからなかった場合には、特許査定をします。
特許査定の謄本が送達された日から30日以内に3年分の特許料が納付されると、特許庁において設定登録の手続が行われ、めでたく出願人に特許証が送付されます。以後、特許の取消または無効という処分が下されることがない限り、4年目以降の各年度の特許料を納付することを条件に、特許出願の日から20年が経過するまで特許請求の範囲に記載された発明に対して独占権を持ち続けることができます。
一方、審査官が何らかの拒絶理由を見つけた場合には、審査官は、その拒絶理由を出願人に通知する書面(拒絶理由通知書)を送付します。出願人は、通知された拒絶理由に対し、審査官により指定された期間内(通常は拒絶理由の通知から60日以内)に、意見書や手続補正書(特許請求の範囲等を補正する書面)を提出することにより、拒絶理由の解消をはかることができます。審査官は、この手続により拒絶理由が解消したと判断した場合には、特許査定をします。
上記の手続が指定期間内に行われなかった場合や、手続は行われたが拒絶理由は解消していない、と判断した場合には、審査官は拒絶査定をします。この拒絶査定に対し、出願人は拒絶査定の謄本が送達された日から3ヶ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます。拒絶査定不服審判が請求されなかった場合には、拒絶が確定し、特許を受ける可能性はなくなります。
意見書や手続補正書の提出により通知された拒絶理由が解消した場合でも、審査官は、別の拒絶理由を見つけて、再度、拒絶理由を通知することがあります。この場合にも、出願を維持するには、意見書等による応答手続を行う必要があります。
拒絶査定不服審判が請求された場合には、3人または5人(通常は3人)の審判官のグループ(合議体)による審理が行われ、特許審決または拒絶審決が出されます。
合議体により特許審決が出された場合には、その審決の謄本の送達の日から30日以内に特許料を納付することにより、設定登録を受けることができます。また、拒絶審決が出た場合でも、直ちに拒絶が確定する訳ではなく、拒絶審決の謄本の送達があった日から30日を経過するまでの間に、知的財産高等裁判所に対して審決の取り消しを求める訴え(審決取消訴訟)を起こすことができます。この訴えが提起されなかった場合には、拒絶が確定します。
なお、拒絶査定不服審判の請求時に特許請求の範囲等を補正する手続が行われた場合には、合議体による審理に先立ち、審査官による再度の審査(前置審査)が実施されます。この前置審査において拒絶理由が解消したと認められた場合には、審査官により登録査定がなされます(詳細につきましては、「拒絶査定不服審判と前置審査」の記事をご覧下さい。)