公報に関する基礎知識

 公報とは、特許庁により発行される刊行物で、出願の内容を公開するものと権利の内容を公開するものとがあります。

 

 特許出願の場合、原則として出願から1年6ヶ月が経過した時点で、公開特許公報という名称の公報により出願された発明や出願人などが公開されます。そして、審査により許可されて特許が付与された後に、特許掲載公報(一般には特許公報と呼ばれています。)により、特許を受けた発明や特許権者などが公開されます。

(1)公開特許公報

 左に示すのが、公開特許公報の第1ページ(フロントページと呼ばれるもの)です。このフロントページの右上に記されている特開という文字と2種類の数字(年号通し番号)との組み合わせが出願公開番号と呼ばれるものです。

 出願公開番号の下には公開日が記されています。

 出願公開番号は、かつては、年号部分が、昭和のや平成のを付けた和暦表示になっていましたが、2000年より西暦表示に改められました。

 

 フロントページの上半分には、出願番号、出願日、出願人、発明者などの諸情報(書誌情報と呼ばれています。)が掲載され、下半分には発明の名称と、要約および代表図面が掲載されます。要約は、発明の課題とその解決手段とを簡単にまとめたもので、発明のアウトラインを把握するのに便利です。

 2ページ目より、特許請求の範囲、発明の詳細な説明(明細書)、図面という順に、出願の実体的な書類の内容が掲載されます。これらは、出願人または代理人により作成され、願書に添付されて特許庁に提出された書類そのものです。特許請求の範囲は、出願人が独占権の付与を求める発明を示すのものであり、明細書や図面は、特許請求の範囲に記載された発明の解説書に相当するものです。

 

 特許請求の範囲は、取得したい権利を意識して広い概念が表されることが多く、しかも通常とは異なる特有の言い回しや抽象的表現が含まれることがあるため、一読しただけでは意味がわからない・・・というケースが多々あります。そのような場合には、まず要約書や明細書を読んで具体的な発明の概念を把握してから特許請求の範囲の記載にあたることをお勧めします。

 明細書には、一般に、【技術分野】【背景技術】【発明が解決しようとする課題】【課題を解決するための手段】【発明の効果】【発明を実施するための形態】などの項目が設けられていますが、そのうちの【発明を実施するための形態】に、発明者により創出された発明の具体例(実施例)が記載されています。図面も、殆どが実施例を視覚的に表したものです。

 なお、明細書には、全体を通じて【0001】のような4桁の通し番号(段落番号)が入っています。段落番号は、平成2年に電子出願の制度が導入されたときに、明細書を補正する場合の便宜のために導入されたものです。

(2)特許公報(特許掲載公報)

 

 特許公報の体裁も、公開特許公報と大きくは変わりませんが、第1ページ目の右上に特許番号が記され、中央以下に、特許請求の範囲が掲載されます。

 

 特許公報に掲載される特許請求の範囲は、特許を受けた発明の内容を示す書類、つまり権利書としての機能を持つ書類です。記載中に下線が引かれている箇所がよく認められますが、この下線は、補正によって出願当初の記載とは異なる内容になった箇所を示すものです。補正の多くは、審査において拒絶理由を通知された場合に、その拒絶理由を解消する目的で行われますが、誤記の訂正など、拒絶理由とは関係なく自発的に行われるケースもあります。

(3)登録実用新案公報


 登録実用新案公報は、実用新案権が付与された考案の内容や実用新案権者などを公開するものです。ただし、現在の実用新案は、実体的な審査を行うことなく登録されるため、実質的に、出願の内容を表すものとなります。形式的にも、公開特許公報と同様に、フロントページに、書誌事項、要約、代表図面が掲載され、2ページ以降に、実用新案登録請求の範囲、明細書(考案の詳細な説明)、図面が順に掲載されています。

(4)その他の公報

 特許出願を公開するものとして、公開特許公報のほか、公表特許公報という公報があります。これは、日本語以外の言語により行われたPCT国際出願で日本国への移行の手続きが行われた出願の翻訳文(日本語)を公開したものです。

 PCT国際出願は国際公開という制度により公開されるので、日本語によるPCT国際出願については国内向けの公報は発行されていませんが、調査の便宜等を考慮して、再公表特許という名称の刊行物が発行されています。公報ではありませんが、体裁は公開特許公報や公表特許公報と同様です。

 

 上記のほか、旧制度の公報として、特許,実用新案ともに、公告公報と呼ばれている公報があります。公告公報は、審査により許可された出願の許可された内容を登録前に公開する制度(出願公告制度)が実施されていた時代の公報で、「特公昭」のような文字付きの公告番号が付されています。

 また、実用新案に関しては、出願公告制度が廃止されてから現在の無審査登録制度に移行するまでの間、現在の特許掲載公報と同様の位置づけで実用新案登録公報という公報が発行されていました。ちなみに、審査が行われていた時代に登録された実用新案権は、全て権利期間を満了しています。