分割出願とは?

 分割出願というのは、特許出願に複数の発明が含まれている場合に、そのうちの一部の発明を権利化の対象として提出された新たな特許出願です。

 

 分割出願をすると、その出願日は、実際の出願の日ではなく、元の特許出願の日であるとみなされます。これを出願日の遡及といいます。また、分割出願の件数に制限はなく、分割出願をさらに分割する手続(孫分割)をすることも可能です。

 

 「複数の発明が含まれている」と言えるケースは様々です。

 

 一番わかりやすい例は、元の出願の特許請求の範囲に複数の請求項が設定されている場合に、それらのうちの一部の請求項を分割するケースです。

 たとえば、各請求項の発明を1つの出願にまとめることが認められなかった場合や、一部の請求項のみに拒絶理由が通知された場合には、認めてもらえそうにない請求項を削除する補正をしますが、削除した請求項の権利化をあきらめたくない場合には、その請求項を分割出願として出願し直す方法がとられます。


 当初の特許請求の範囲には請求項として設定されていないが、明細書や図面に記載されている発明について、分割出願をする場合もあります。このような分割出願は戦略的に行われることが多く、元の出願の請求項に設定した発明よりも上位の概念の請求項を設定する場合もあれば、その反対に、明細書に記載された具体例に特化した概念の請求項をたてる場合もあります。

 

 分割出願は大変便利な制度ですが、出願をすることができる時期には制限があります。審査により一度拒絶理由が通知されてしまうと、その後は、明細書等を補正することが認められているときでなければ、分割出願をすることはできません。また、分割出願の書類には、元の特許出願の書類に記載されている範囲の事項を逸脱した内容を記載することはできません。

 

 補正をすることができる時期のほか、拒絶査定の謄本を受領してから3ヶ月の間(拒絶査定不服審判の請求が可能な期間)や特許査定の謄本を受領してから30日以内にも、分割出願をすることが認められています。しかし、これらの場合には、元の特許出願の当初の書類に記載されている内容であっても、補正により削除してしまった事項については、分割出願に反映させることができません。審査の過程で、補正後の請求項に関係ない内容だからと、明細書や図面を必要以上に削除するような補正は避けた方が良いと思います。

 

 審査により分割出願の記載内容が分割の要件を満たしていないと判断された場合には、その出願は通常の特許出願であると認定され、出願日の遡及効果を得ることはできなくなります。