特許権をはじめとする産業財産権は、特許庁内で設定登録という手続が行われたことによって発生します。
設定登録を受けるには、審査への合格通知(登録査定の謄本)を受けてから一定の期間内に登録料(特許の登録料のみ特許料と呼ばれます。)を納付します。
特許の場合は初回に3年分の特許料を一括納付する必要があります。意匠については1年分のみの納付で設定登録を受けることができます。無審査で登録される実用新案については、出願と同時に3年分の登録料を納付することになっています。 商標では、権利期間全体(10年)または半期分(5年)の登録料を一括納付しなければなりません。
商標権を除く各権利の登録料は、1年単位で定められており、設定登録後は、次の年度に入る前に登録料を納めなければなりません。このようなことから、特許庁に納める登録料は年金と呼びならわされています。 この特許庁への年金は、従来はかなりの高額でしたが、数年前に見直されて、だいぶ引き下げられました。
とはいえ、段階的に高い額へとシフトしてゆくように設定されているので、権利者の負担はしだいに重くなります。たとえば、特許で請求項が1項の場合には、最初の特許料は1年分につき2,500円ですが、4年目より7,600円となり、7年目より23,100円となり、10年目以降は66,400円になってしまいます。
特許権により得られる利益は年を重ねるにつれて増加し、特許権の価値が高まるはずだという考え方からこのような費用設定になっているようですが、後半の値上げ幅はちょっと大きすぎる感じがしますねぇ。個人的には、前半の費用を少し上げてその分後半の費用を下げるなどした方が、権利を維持しやすいようにも感じています。
毎年の年金の納付の時期や納付金額ですが、特許庁が通知をしてくれることはありません。うっかり納付を忘れると、権利は消滅してしまいます。最近は自動納付手続きを利用できるようにもなりましたが、こちらは納付を打ち切りたい場合でも解約の手続がされなければ引き落としされてしまうため、やはり注意が必要です。また、結構めんどうな手続きをしなければならないのも難点です。
納付を忘れてしまった場合、期限から6ヶ月が経過するまでは追納が認められているのですが、通常の2倍の費用を納めなければなりません。6ヶ月を超えても特別に追納が認められることもありますが、それは天災など特段の事情があった場合に限られます。「うっかり忘れた」という理由で追納が認められることはまずありません。
産業財産権の年金も国庫に入るものですから、固定資産税などと同じように、納付金額や納付の期限を通知してくれたり、口座から定期的に引き落としてくれても良いような気もしますが、上記のとおり、納付の期限は権利者自らが管理しなければならず、期限を落とした場合の救済にも厳しい条件があります。
そういう次第ですので、苦労して権利をとったのに、年金未納のために権利が抹消されてしまうようなことがないように、ぬかりなく年金の納付期限を管理しなければなりません。なお、毎年の期限は、設定登録がされた日に相当する日となります。
年金の納付額を間違えた場合、納付すべき金額より少ない場合には、不足額を納付することを求める補正指令が出ますが、間違えて多く納付してしまった場合には通知はされず、過分に納付したお金は自分で返還請求をしないと戻ってきません。しかも返還請求ができるのは納付から1年以内ですので、くれぐれもご注意下さい。